ガレージハウス考察 - 建築スタジオブログ一覧 - 名古屋市の住宅設計事務所 江川竜之建築スタジオ

ガレージハウス考察

ガレージハウス考察 駐車方法について

住宅の設計をさせていただくにあたり、最初のヒアリングの際に、必ずと言っていいほど駐車スペースについての確認をさせていただいております。

打合せの結果、駐車方法は大きく分けて、下記の4つのいずれかに属することになります。

  1. ビルトインガレージ
  2. オープンガレージ
  3. 屋根付き駐車スペース
  4. 青空駐車スペース

それぞれの事例について、ご紹介していきたいと思います。

 

1.ビルトインガレージ

建物の中に駐車場を設けるケースです。

防犯のため、シャッターを設置することが多いのも特徴の一つです。

ビルトインガレージの中でも下記のタイプに分かれます。

  • 本体直下型
  • 平屋車庫型

 

ビルトインガレージ 本体直下型 事例01 傾斜地を利用した半地下ガレージ

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傾斜地で、下方が道路に接している場合、フラットな敷地と比較的して、半地下のガレージがつくりやすい状況といえます。

この事例は、半地下部分のみ鉄筋コンクリート構造として、4台分の駐車スペースを確保しています。

ガレージの奥には、そのまま上階の住居にアクセスできる階段とエレベーターシャフトを設けています。

直下型の利点は、車-室内間のアクセスの際に、外に出ることなく行き来できるよう計画がしやすいことではないでしょうか。

このタイプを設計する際には、暴風時に強風で雨水が中に入ってくることを防ぐため、奥から手前にかけて傾斜をつけることが大切なポイントの一つです。

また外部からガレージ内が見えるかどうかについては、主にシャッターの仕様で決まります。

シャッターは窓なし、窓あり、パイプタイプなど、様々な仕様を選択することができます。

この事例は小窓を設けているので、日中であれば照明なしでもある程度の明るさを保っています。

シャッターは窓なしとして、ガレージの別の壁面で明かり採り窓を設ける手法もあります。

 

ビルトインガレージ 本体直下型 事例02 スロープでアクセスする地下ガレージ

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スロープで地下まで下り、そこに直下型でガレージをつくった事例です。

スロープの距離が長くなるので、比較的広い敷地が必要となります。

この事例では、道路際と地下カレージ前に2か所のシャッターを設け、防犯性を高めています。

豪雨時に雨水が溜まらないように、排水溝と桝を設けつつ、ポンプアップできる仕様としています。

一台のポンプでは、万が一の故障の際にたいへんなことになるので、必ず予備のポンプも設置しておくことが必須です。

 

ビルトインガレージ 本体直下型 事例03 間口が広い住宅のビルトインガレージ

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直下型にて一台分のビルトインガレージスペースを設けた事例です。

全体が木造の場合、2台分までは何とかなっても、3台分を柱なしの一枚シャッターでつくることは難しく、実現のためには特殊な設計技量を要します。

間口が狭い場合は、1台分ですら、耐力壁を設けることができず困難となるケースもあります。

この事例のように間口が広い場合は、比較的容易に直下型のガレージをつくることができます。

 

ビルトインガレージ 平屋車庫型 事例01 平屋建てのガレージ

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当事務所では、平屋車庫型の事例も数多くあります。

本体が平屋建てで、かつビルトインをしたい場合、自然の流れでこの形状になりやすいです。

こちらもガレージ内に、住居部分につながる通路を設けることができますので、乗り降りの際、外に出ることなくアクセスできるよう計画することが重要なポイントです。

一般的にシャッターは、ドアや窓に比べて面積が大きく、ファサードデザインに対する影響も大きいので、色・質感・スラットの形状などは、よく検討して決めていきます。

巻き込み型だけでなく、オーバースライダー型のシャッターを採用するケースもよくあります。

 

ビルトインガレージ 平屋車庫型 事例02 歴史的景観地区の条例に合わせたガレージデザイン

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白壁の町並み保存地区にて設計した事例です。

道路に面する部分は、和を意識したデザインとしなければならず、シャッター部分も条例の適用範囲でした。

木格子と並べて木製のオーバースライダーシャッターを採用することで、和を演出し、条例をクリアすることができ、補助金をいただくこととなりました。

当事務所では、ガレージをガレージ然として設計するのではなく、建物全体の一部であることを意識しています。

諸条件に合わせて、一体のデザインとすることをお勧めしています。

 

ビルトインガレージ 平屋車庫型 事例03 並列ガレージ

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この事例は、屋根のある玄関アプローチを挟み、本体とガレージを並列に並べています。

ガレージから住居部分に至るアクセスは、雨には濡れませんが、一旦アプローチという外部を介して玄関に辿り着きます。

ガレージハウスを設計する際には、夜遅く帰ってくる家族がいる場合、シャッター音が気になる、というご意見をうかがうこともあります。

並列型はそんな時の解決案の一つといえます。

静音タイプのシャッターもありますので、そちらを選択するという手もありますが、本当に音と振動が気になる方には、やはり並列型が適しているのではないかと考えています。

 

ビルトインガレージ 平屋車庫型 事例04 ガレージを側道に設ける

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敷地が2つ以上の道路に面している場合、車の出し入れは、基本的にはメインの道路ではなく、サブの側道からの出入りをお勧めしています。

理由は ”安全性” と ”意匠性” です。

比較的、車や人が通らない道路からの方が安全に出入りできます。

意匠性については、面積が大きいシャッターが正面にない方が、デザインをまとめやすいといえます。

この事例は大通り側にはシャッターどころか、玄関ドア、窓一つ見せないようにデザインしています。

車の出入りは横から、と計画の取っ掛かりから決めていました。

ガレージの屋上は、物干スペースとして設計しています。

 

ビルトインガレージ 平屋車庫型 事例05 2棟ガレージのある家

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お車がお好きで、敷地が広く、かつ2方向以上が道路に面している場合、ガレージを2か所以上に分けてつくることもあります。

「普段使い用」と「コレクション用」というように、車の目的別にガレージを使い分けることもできます。

表から見ると、木製オーバースライダーシャッターのガレージしかないと思いきや、実は別の道路に面して、もう一棟ガレージを単体で設けています。

サブガレージの裏側にある掃き出し窓は、スライドして開けることができ、その奥にある砕石駐車場に、さらに縦列で何台も停めることができます。

 

ビルトインガレージ 平屋車庫型 事例06 ガレージ内の車を観賞する

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ガレージ内の車を観賞できるよう奥の壁をガラス張りとした事例です。

水盤を介して車を堪能していただけるよう設計しています。

 

2.オープンガレージ

屋根・壁の一部、またはそのほとんどが塞がれていないオープンスペースをガレージとした事例です。

ビルトインガレージと同様に下記のタイプに分かれます。

  • 本体直下型
  • 平屋車庫型

オープンガレージ 本体直下型 事例01 オーバーハングを利用したピロティタイプ

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2階部分をオーバーハングさせ、ガレージとした事例です。

車の全体をカバーさせずに、運転席側のみ建物下となるように、割り切った考え方とする場合もあります。

スペースとコストを節約する場合には、最適な方法といえます。

 

オープンガレージ 平屋車庫型 事例01 2階増築を想定したガレージ

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平屋車庫型は、屋上を屋根とすることもあれば、有効利用できるよう用途を持たせて計画することもあります。

この事例は、本体は木造ですが、ガレージのみ鉄骨造としています。

間口を広く確保するという目的が主ですが、実は屋上部分に将来増築ができるように設計していることもあり、鉄骨造の方が将来増築しやすい、という理由も併せ持っています。

従いまして、あらかじめ2階を想定した構造計算を行っています。

正面はパイプシャッターを設け、側面はオープンとしています。

一応、塀やフェンスを越えないとガレージ内には立ち入れないよう設計しています。

 

オープンガレージ 平屋車庫型 事例02 ガレージメインのデザイン

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この事例はガレージ部分がデザインのメインとなるように設計しています。

カテゴリー分けとしましては「オープンガレージ」と「屋根付き駐車スペース」の両方の要素を併せ持っています。

この2つに分かれ道は、例えば既製品のカーポートみたいに、全く別の要素として屋根が存在しているかどうか、という視点に基づいています。

ガレージ部分はその機能上、道路際に設置せざるを得ないケースがほとんとです。

分譲住宅などでは、本体の前に既製品のポリカーボネード製カーポートを設置することが多いようですが、せっかく本体のデザインに凝っていても、カーポートが一番手前に来るので、台無しになってしまう建物もしばしば見かけます。

この事例は、ガレージ部分ありきで、本体の延長として一体で成り立つようデザインしています。

このコンセプトでつくられたものが、ある意味で本当の『ガレージハウス』かもしれません。

 

3.屋根付き駐車スペース

当事務所では、既製品のカーポートを設ける事例は少ないですが、本体前に屋根を設置するケースはあります。

屋根付き駐車スペース 事例01 本体デザインに溶け込み邪魔をしない屋根

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事務所併用住宅の事例です。

自家用車の一台分のみ屋根を設けて、頻度の少ない来客用は青空駐車としています。

本体の整形なプロポーションで構成されたデザインに合わせて、既製品の屋根ではなく、あえてオリジナルで設計しています。

鉄骨2本と板一枚というシンプルな要素のみで設計しました。

柱をなるべく外側の境界際に設け、片持ち屋根とすることで、本体のファサードデザインに影響が及びにくいよう意図しています。

 

4.青空駐車スペース

クライアントの中には、青空駐車で構わない、という方も多くいらっしゃいます。

青空駐車スペース 事例01 門扉などの境界工作物のある駐車場

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道路と本体の間にスペースを設け、駐車スペースとした事例です。

撮影には間に合わなかったのですが、この後、道路際に門塀と門扉を設ける工事を実施しています。

 

青空駐車スペース 事例02 フルオープンの青空駐車場

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道路との間に何もないフルオープンなケースです。

コンクリート舗装する場合と砕石敷きにとどめる場合と、床の仕上げはケースバイケースです。

 

計画段階のガレージハウス

ビルトインガレージ

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オープンガレージ

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青空駐車スペース

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ガレージハウスの設計

日本における住宅設計には、よほどの都心でない限り、駐車スペースについての話題はついて回ります。

あえて『ガレージハウス』と呼ぶ場合、この用語には、単に駐車スペースを設ける、という物理的な要素以上に、車やバイクなどを大切に想う気持ちが含まれていると考えています。

車を生活の大切な一部と捉え、紫外線、風雨、いたずら、盗難などから守る、という想い、あるいは自慢の愛車をかっこよく見せたい、という想いが込められているのではないでしょうか。

場合によっては、住宅内で観賞できるようにと、インテリアの対象にまで地位が引き上げられることもあります。

一方で、外に出ることなく車へアクセスできる、という機能上の利点も見過ごせませんが、やはりメインは 【車自体への強い想い】 が前提として存在しているように感じます。

当事務所では、クライアントの要望が

『ガレージハウス』なのか、それとも単に

『駐車スペース』でよいのか

という切り分けをヒアリングの中から汲み取るようにしています。

『ガレージハウス』への強い想いをお持ちである、と受け取らせていただいた場合は、

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の事例のように、ガレージありきのデザインにて提案させていただくこともあります。

これからも『ガレージハウス』の設計依頼をいただくこともあるかと思いますが、クライアントが有している想いの強さを共有しながらデザインに反映していきたいと思います。

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